タクシー運転手は出家しない?

宗教, 社会

昨日の夜、タクシーで友人の家に向かった。7時過ぎ、ヤンゴンの道路はいつものように渋滞して車はなかなか進まない。

ヤンゴンはどこも渋滞
ヤンゴンはどこも渋滞

「日本の車のGPSは、混んでいる道路がわかかるんだって?」
「そうみたい。リアルタイムでわかるから、どこを通れば早く着くかもわかかるよ」
「そのGPS、ヤンゴンじゃ役に立たないね。全ての道が混んでるから」
「はははははー」

と、おしゃべり好きな運転手とビルマ語で会話が弾んだ。といっても、私の子どもビルマ語に根気強く運転手が付き合ってくれたからだ。次は日本人についての話題になった。

「日本人は真面目でいい人たちなんで、オレは大好きだ」
「いやいや、日本人でも悪い人はいっぱいいる。いい人はいい人、悪い人は悪い人、ミャンマー人と同じだよ」
「そうだそうだ! 世界中どこの国も同じだ」

と、運転手。当たり前の結論に妙に強く納得していた。そろそろ友人宅に近づいたが、また渋滞に引っかかった。

「日本じゃキリスト教が多いのか?」
「いや、仏教が多いよ。でも、ミャンマーの仏教とはだいぶ違う」
「同じ仏教だろ。何が違うんだ?」
「日本の僧侶は結婚もして、酒も飲むんだよ」
「ありゃー、本当か?」

車のダッシュボードには仏像が置かれていた。ミャンマーのタクシーではよく見かけるスタイルだ。しばらく、日本とミャンマーの仏教の違いで話が盛り上がった。

「ミャンマーの仏教では男は一度は出家するんだよ」
「カーサヤー(運転手)は最初に出家したのはいつ?」
「いや、出家したことはない。実はオレ、ムスリムなんだ」
「えええええー、その仏像は?」
「ははは、普通のことだよ」

ちょうど、車は友人宅前に着いた。もっと話を聞きたかったが、運賃を払ったら車はそのまま去っていった。お金を支払った時にちらりと見た顔は、インド系というよりビルマ系の顔だった。

仏像を飾るムスリム、ミャンマーだけかもしれない。

注)2013年、ミャンマーで反イスラム暴動が各地で起きた。その後、イスラム排斥運動も盛んになり、ムスリムが経営する店やタクシーを拒否する仏教徒が増えた。今回の運転手も仕事のため仕方なく仏像を飾ったのだろう。

宗教, 社会

Posted by 後藤 修身