遠くを見る男(ナガ)

Myanmar Photo

インドとの国境地帯には2000m以上の山々が連なっている。この地域のインド側は独立闘争で有名なナガランド州、ミャンマー側はザガイン管区に属するが同じくナガ族の人たちが住んでいる。ナガ族と一言でいっても単一の民族ではない。外部の人間が勝手にナガ族と総称しているだけだ。部族によって言葉も違うし、特にミャンマー側は自分たちがナガ族という帰属意識は薄い。このナガの地は戦後ずっと外国人には閉ざされていた。インド側である程度外国人が入れるようになったのは90年代後半からであるし、ミャンマー側では新年祭に限り2000年から入れるようになった。私が初めてナガの地に立ったのが2001年1月であった。


レイシの祭りの会場は、予行練習が終わったばかりでグランドはがらんとしていた。そこに一人の男が遠くを見て立っていた。かっこよすぎた。彼に限らずナガの男たちは非常に魅力的だ。フェミニストからは糾弾されるかもしれないが、「男」が「男」である。男の私が見てもほれぼれする。男は力が強くなければいけないし、勇気がなければいけない、そして美しくなければいけない。全て私が持ち合わせていないものばかりだ。

その年は写真を撮っただけで、どこの誰だかも分からなかった。翌年、私はまた新年祭に出かけた。この写真を渡すために会場をいろいろと探し彼と再会した。名前はジョロー、インド国境近くのソムラに住むトンクー(タンクール)ナガだ。村を代表して20人ほどのグループで来ていた。彼らと仲良くなり夜は一緒に酒を飲む。そのときにジョローがポツリともらした。「どうしたら自分たちは豊かになれるんだろう」。

私たちは非日常を体験したいがために旅に出る。特に辺境地に行くと、あまりの違いに感激し、そのまま変わらずにいてほしいと願う。だが、それは旅人のわがままだということを自覚しないといけない。そこに住む人たちは、世界を旅することができる「豊かな」国から来た我々を見、同じように豊かになりたいと望んでいるからだ。

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Posted by 後藤 修身