ナガの青年
若者がいた。祭りの会場、ラヘーから歩いて2~3日の村からやってきたという。頭はイノシシの毛と牙で飾られたボウシをかぶり、顔の周りには虎の爪のフェイスリング。この雄々しい姿はキャミュンガン・ナガの正装だ。だが、ファインダーから覗いた彼の表情にはまだ幼さを残していて、雄々しい正装と少々ギャップがあった。この写真を撮った2、3時間後、この青年から声をかけられた。今度はTシャツとジーンズ姿、同じ年代の隣村の友人たちと一緒だった。Tシャツはこの祭りの参加者に対して政府から支給されたものだ。その彼らから記念写真の撮影を頼まれた。どうも、Tシャツ姿の方が彼らにとっては正装らしい。ファインダーを覗くと、たしかにTシャツ姿の方が彼には合っていた。
若者たちは20代前半、流暢ではないがビルマ語をしゃべる。同じ村の男でも、40代以上になるとビルマ語が全然通じない。というのも、80年代に初めて村に学校ができてビルマ語を教わるようになったという。それにしても、こういう格好をすると、ちょっと見は日本の若者と変わらない。驚くほど日本人と顔が似ている。ということは、彼らが私を見てもナガの人間のように見えているかもしれない。そのせいか、何度も記念写真の撮影を頼まれた。カメラを持った欧米人旅行者も何人かいたのだが、顔が似た日本人の方が頼みやすいのだろう。写真というとも、もう一つ話題が。この祭りのときに知り合いの日本人女性Tさんがいた。彼女もこの青年の写真を夢中になって撮っていた。日本に戻ってその写真を見せてもらったら、なんと、Tさんが撮った写真のほうが私が撮った写真よりも何倍もいい表情をしているではないか。ナガ青年の目がキラキラしていたのだ。やはり、人物写真は異性が撮ったほうがいい表情になるようだ。
ディスカッション
コメント一覧
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後藤さんのブログでは貴重な写真を見ることができ、毎回楽しみにしております。ところで空が真っ青なのは、ナガ地区が高地だからなのでしょうか?この青は日本の空とはやはり違いますか?
それと学校の授業についての質問ですが、ネ・ウィン体制になってから少数民族の学校では使用言語はビルマ語のみに変わったと聞いたのですが、ナガ地区でもナガ語(こう呼ぶのでしょうか?)はもう学校では教えられないのでしょうか?ご存知でしたらで結構ですので、お願いします。
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写真を撮ったラヘーは標高2500m(うろ覚え)、空は濃いブルーで、日本の空とは全然違いました。また季節は1月だったので、朝はかなり冷えました。
学校では公式にはビルマ語だけになります。ただ、学校や先生が独自にそこの言葉を教えるケースが中にはあると聞きます。しかし、ナガのような地域だとナガ語という統一された言語はなく、トンクー語、キャミュンガン語、ミミ語など、部族毎に言葉が違います。それに、文字を持っていないので学校で教えるのも難しいでしょう。一部部族ではアルファベットを代用して聖書の翻訳本などを作っているケースがあるようですが、文字自体はその部族でも一般的ではないようです。
インド側はナガミーズ Nagamese というナガの統一言語があります。アッサム語とナガの各部族語がミックスした比較的新しい言葉(100~200年?)です。ナガミーズはミャンマー側ではあまり使われていないようです。
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上記のラヘーについて、某氏より間違いだよメールが来ました。そ、そうでした。ラヘーではなくレイシでした。ラヘーは翌年の新年祭でした。大きな勘違い。で、標高は正しくは1,360mでした。ちゃんと調べて書かないといけないですねえ。
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お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。
濃いブルーの空。きれいでしょうね。
民族によってはさらに下位の部族の数ほど言語があるとは驚きです。人類の歴史の中で言語は増えているのか、減っているのか考え込んでしまいます。英語やビルマ語は本や辞書を使って勉強できる稀な言語なのだと、感謝しつつ勉強しなくてはいけませんね。
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ナガの場合は山の上のほうに村があるので、昔は山ひとつ越えると村同士の交流が少なく、あっても、交流というよりは戦いばかりでした。そういう環境により、言語も独自に発達したようです。ナガでは村を村としてではなく、ひとつの国家として考えた方がいいかもしれません。それでも、アッサムとの交流があり、その中でナガミーズという言葉が生まれてきたそうです。
http://ccat.sas.upenn.edu/~haroldfs/messeas/handouts/nagamese/nagamese.htm
にナガミーズについての面白い記事がありました。ナガミーズは比較的新しいようです。また、複数の言語が混合して生まれた言語を、ピジン語とかクレオール語というそうです。ジャパニーズイングリッシュなども一種のピジン語と言えるかもしれないですね。