ナガの旅~その5~恐怖の按摩おじさん

ミャンマー各地

まる1日の休養日となったレイシ。地元の人から、「按摩の上手な人がいる。呼んでみるかい?」と言われた。これはもしかしてナガの民間療法?身をもってナガの伝統が体験できると期待した私はお願いすることにした。その日の夕方、そのおじさんがやってきた。年の頃は60前後、髭をちょっぴりたくわえたその風貌は普通のナガのおじさん。しゃれた赤いマウンテンジャケットが妙に似合っていた。外国人にもらったのであろうか?按摩はナガ伝統のものかと尋ねると、残念ながらビルマ族のものだという。まあ、ここまできたらしょうがない。身を任せることにした。

ベッドに仰向けになるように促された。私の右足をゆっくりと持ち上げると、「ここが痛いのか?」と患者の痛みなど無頓着のように無造作に突っついてきた。「おりょうう、いたたたた」と前日の看護婦さんのときと違って私も遠慮なく痛みを訴える。よっしゃ、と言ったか言わないか、足を両手で抱え込むと突然力いっぱいひねってきた。

うぎゃあああああ~~~
あまりの痛さに悲鳴をあげた。それも一度だけでなく何度も何度も繰り返しひねってくる。そのたびに「うぎゃ~うぎゃ~」と情けない声をあげた。D先生が心配そうにのぞき込む。昨日の看護婦さんからは「安静にしなさい」と言われたのに、こんなことをしていいのか!!! と抗議しようと思ったが、按摩おじさんは熟練した職人といった表情でぎゅっぎゅっと規則正しくひねっている。それを見て、もしかして名医かもと思うようになってきた。私の中では、もう按摩おじさんではなく按摩先生にランクアップしてしまった。そう、私は暗示にかかりやすいたちなのだ。こうなったらじたばたしてもしょうがない。と、カメラを持って治療風景を撮りだした。D先生には懐中電灯を按摩先生に上手に照らすようにと、アシスタントをお願いしたりした。するとちょっとは痛みも紛れるような気になってきたから不思議である。

永遠に続くかと思われた治療も30分ばかりで終わりがきた。
「明日には楽になっているよ」
と按摩先生は確信を持った目で私に告げた。それを信じる気持ちが半分、もしかして今の治療で再起不能になったのではという気持ちが半分であった。

その夜、本当に明日は村巡りに出発できるんだろうかと不安になりながらも、寝付きの良い私はあっという間に眠りに落ちた。