『異郷の女』戦時中のビルマでの恋

ミャンマー絡み, 日本 in Myanmar,

異郷の女友人から珍しい本を借りた。『異郷の女』という1956年に出た小説で、作者は村松喬。

戦時中のビルマに派遣された日本人記者とシャン族の娘の恋愛小説だ。戦時中のビルマ関係の本というと戦記物ばかりで、こういう本は珍しい。

読む前はそれほど期待していなかったのだが、読み始めると止まらなくなった。面白くて一日で読んでしまった。男女の恋愛に、日本とビルマという支配者と非支配者のの関係が絡んでいる。読んでいて、ジョージ・オーウェルの『ビルマの日々』を何度も思い出してしまった。作者もかなり意識して書いるように思える。

ジョージ・オーウェルは常に冷静にビルマを見ていたが、村松喬は個人的にビルマに入れ込んでいたようだ。人間としてのビルマ人や人の住む町の描写が多く、ビルマにかなり好意的に書いている。それに、恋愛小説なのに読み終わったらビルマの基礎知識も頭に入るという本だ。

小説の中でワ族やパンデー人のことが書かれていたのにはびっくりした。ワ族の入り口の町、パンロンまでの旅を書いている。パンロンは中国系イスラム教徒、パンデー人の故郷でもある。このパンロンではワ族とは出会えなかったが、途中、「家ワ」と呼ばれる、危害を加えないワ族と出会っている。家ワというのも初めて聞いた。

作者自身、毎日新聞の記者で実際に戦時中のビルマに派遣されている。小説という形式になっているが、恋愛も含めて実際の体験がかなり含まれているに違いない。

この本のように、ほとんど知られていないが面白いビルマ関係の本が他にもあるかもしれない。