一通の封筒

ミャンマー経済, ヤンゴン生活

部屋を出ようとしたとき、玄関に封筒が落ちていたのに気がついた。拾い上げてみると、郵便だった。宛名は、*****Gold & Mining Co., Ltd. とローマ字で書かれていた。なんだ、配達員が間違ったのかと思ったが、住所は私が住んでいるここ U Wisara で部屋番号まで正しく書いている。でも、何で??? 知合いのミャンマー人Kさんに見せることにした。

これが問題の封筒。一部黒塗りしました。
これが問題の封筒。一部黒塗りしました。

Kさんは封筒を見るなり、
「ああ、これは税務署からだな」
と一言。で、封筒を開け始めた。あれれ、いいのか勝手にそんなことやって。Kさんは私の心配など意に介さず、中から書類を引き出した。
「やっぱり、これは納税申告書だ」
6月30日までにこの申告書で納税することというようなことが書かれているそうだ。そんなものが何で私のところに?

Kさんの説明によると、この会社は登記に嘘の住所を書いたという。私が住んでいるアパートの部屋は去年私が入るまで5年ほど空き部屋だった。誰も住んでいないことを知っていた人が会社の住所に使ったのだろうという。何で嘘の住所で登記?たぶん、やばいビジネスをやっていたのだろうとのこと。やはり、Gold & Mining なんて名前からして怪しいよな。でも、今回のように税金の申告書が毎年届くんだから嘘の住所はすぐにばれるのではと聞くと、
「税務署はそんな暇じゃない。わざわざ調査になんか来ないよ」
とのことだ。ただ普通の会社が税金をずっと払わずに済むわけではない。3年毎(業種によって違う)の会社のライセンス更新があるからだ。この更新はけっこう厳しく、税金もちゃんと納めてないとライセンスの更新ができないという。

この会社、最初の3年間だけで税金も払わずやりたい放題やってライセンスの切れるころに雲隠れだろうというのが、Kさんの説明だった。この手のことにKさんがえらく詳しいと感心していると、
「ミャンマーにはこんな会社がたくさんある。みんな知っているよ」
おお、そうなんだ。ミャンマービジネスの奥深さを知ることになった一通の封筒だった。

「ところで、この封書はどうすればいい?」 と、小心者の私。
「そんなの放おっておけばいいよ」
税務署が調べに来るわけでもないし、放おっておいても何も心配ないという。これもミャンマーの奥深さだ。