ウイグル人と中国人、そして日本人

中国, 日本, 民族

ウルムチでのウイグル族と漢族の激しい対立、このニュースを見て思い出したことがある。

ウルムチには2回行った。1987年と1992年だ。その当時でもウルムチはウイグル族よりも漢族の多く住む街で、目抜き通りは普通の中国の街とそれほど変わらなかった。一方、ウルムチ周辺のトルファンやカシュガルはまだ漢族が少なく、中国とは思えない、雰囲気たっぷりのところだった。そのトルファンで12、3才ぐらいの少年と知り合い、仲良くなった。

それから5年後、またトルファンを訪れた。その少年はすぐに見つかった。もう十代後半の立派な青年になっていた。日本語が達者になっていたのには驚いた。日本人旅行者から教えてもらい独学で勉強したという。日本語の勉強のきっかけは、仕事上のことであるが、もうひとつ理由があった。
「日本語で話すと中国人には分からないからね」
まわりに聞かれたくない話を日本語で話すという。彼のウイグル族の仲間にも日本語を話す者がいるというのだ。漢族には聞かれたくない話をするらしい。中国でウイグル人同士が日本語で会話をするというのも奇妙な話だ。それに、彼は「漢族」と言わず、「中国人」と言った。自分たちは中国人と思っていないようだ。また、彼は日本人が大好きだという。ただ、その彼にとって日本人の唯一嫌いなところがあった。
「なぜ日本軍は戦争の時に中国人をみんな殺さなかったんだ」
えええええええええええええ!
そんなにも漢族を憎んでいたのか。それに、日本が好きな理由のひとつが、「中国と戦った日本」だったとは。「残酷な日本軍」の話を学校で聞くたびに、ウイグル族の彼はわくわくしていたんだろう。中国での反日教育が、少数民族には親日教育になっているとは皮肉なものだ。ウイグル人やチベット人からすると、日本人は同士に見えるのかもしれない。

トルファンの少年ももう30代半ば、今回の騒ぎの中どこで何をやっているのだろうか。元気だったらいいが。

カシュガルのシシカバブ売り
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Posted by 後藤 修身