ヤンゴン爆弾テロ事件、誰が?

ミャンマー時事

5月7日付の New Light of Myanmar に爆発事件のことが書かれている。この記事は軍政が公式発表したもので、日本および海外のメディアがこれを元に記事を書いている。ということで、本記事をそのまま翻訳してみた。下手な翻訳だがお許しを。間違いがあったらご指摘願います。

ヤンゴンでの爆発はテロリストによる冷酷な行為の結果だ
群衆への爆風により、罪のない人々を負傷させ殺した
KNU、Ywet Sit 率いるSSA、KNPP、亡命中のセインウィン率いるNCGUBのテロリストのグループが共謀して残酷な行為を行った

YANGON、5月7日、
今日ヤンゴンで連続爆弾爆発事件が起きた。午後2:50にMingala Taungnyunt Township のヤンゴントレードセンターで、午後2:55に Mayangon Township の ジャンクション8センターで、そして、午後3:00に Sangyoung Township のダゴンセンターで。それはテロリストたちの共謀による残忍な行為で、国と社会の平和と安定を犯すものである。

合計11名の罪のない人々と僧侶が命を失い、162名が爆風で負傷した。

首相の Soe Win 中将、SPDC第一書記のThein Sein中将、ヤンゴン管区議長の Myint Swe 少将、内務大臣のMaung Oo少将、保健省大臣の Kyaw Myint 博士、そして当局は、事件現場とヤンゴン総合病院に急行して必要な援助を提供し、犠牲者への処置を行った。証拠(証言)によると、KNU、Ywet Sit 率いるSSA、KNPP、国外在住の Sein Win 率いるNCGUB、などのようなテロリストグループによって非人間的な行為が行われた。

テロリストグループのメンバーは一般の人々に紛れ、タイの見本市が開かれていたヤンゴントレードセンターを訪れた。彼らはYTCの三階のエンターテイメントステージの前にあるシートの間に置かれたバッグに時限爆弾を仕掛け、爆発は起きた。

他の爆発は、買い物客に偽装したテロリストグループのメンバーがジャンクション8センターでシティのマートを訪れ、カウンターに時限爆弾が入ったバッグを置いたときに起きた。

同様に、買い物客を装ったテロリストがダゴンセンターに入り、一階のエスカレーターの近くに時限爆弾が入ったバッグを置き、その後、爆弾が爆発した。

当局は市民の協力により、僧侶と人々が往来している混雑した地域で邪悪な行為を行ったテロリストを摘発するよう調査している。

人々の生命と財産を危険にさらす忌まわしい犯行を行うテロリストの破壊活動に関する情報があれば、市民と僧侶は挙動不審の見知らぬ人と物に対して不断の警戒を行うことになっている。

疑わしげな人々か物を見つけるようなことがあれば、遅れずに警備組織に報告しなければいけない。

上記で「などのような」の部分を赤くしたのには理由がある。原文ではその部分の文章は、

According to the evidences, those who committed the inhuman acts are terrorist groups such as KNU, SSA led by Ywet Sit, KNPP and NCGUB led by expatriate Sein Win.

となっている。such as なので、「などのような」にした。日本や海外の報道では、今回の事件の犯人として軍政は KNU, SSA, KNPP, NCGUB を名指しで批判したという記述になっているが、半分正しくて半分間違っている。なるほど、この New Light of Myanmar の記事のタイトルでははっきりと犯人として名前を挙げているのだが、本文ではなぜか such as になっている。結局、軍政側も現時点では犯人が誰かは分かっていないようだ。

今回の事件の犯人はまだ全然分からないが、軍政が発表しているような少数民族グループでもないし、民主化グループでもないだろう。シャンやカレンなどだったらタイの物産展会場を襲うわけがない。国境付近での戦いでは、ミャンマー国軍に押されたらタイ側に逃げ込んでいた。タイ国軍によって守られていたという側面がある。そういう恩義のあるタイに被害が及ぶようなテロを行うわけがない。他の少数民族にしても、不特定多数の一般人を標的にすると、自分たちの民族の人まで殺す恐れがある。また、他の少数民族グループにしても、ヤンゴンで不特定多数の一般人を狙うと、自分たちの民族も犠牲になる恐れもあるし、従来の戦い方からして無差別テロは考えにくい。

また、今回の爆発テロが起こる前に小規模の爆発が何度かヤンゴンやマンダレーであった。これらについては、軍政の自作自演ではないかという噂があったが、今回のような大規模な事件を起こすことは考えにくい。

民主化闘争のグループにしても、無差別テロは一般人を敵にまわすだけだからやるはずがないし、彼らのシンボルであるアウンサンスーチーは非暴力主義者でもある。ただ、気になるのが共産主義勢力だ。無差別テロを行うにはイスラム原理主義のように宗教的バックボーンがなければなかなかやれるものではない。日本ではオウム真理教の記憶が生々しいが、他にもテロリストがいた。赤軍派である。共産主義も一種の宗教だとうのはよく言われることだ。で、ミャンマーであるが、去年の12月に「爆弾事件」ということでこのブログに書いた。ミャンマーの共産党は非常に弱体化しているが、「Demo-2006」というのを発表している。

もうひとつ気になるのが麻薬絡みだ。最近でこそ減りつつあるが、ワやコカンのアヘン生産は有名である。昔は麻薬王として海外で有名だったクンサなどもシャン連合軍を率いていた。他にも麻薬を収入源としている少数民族グループはある。また、彼らが90年代にミャンマー政府と停戦するときに、麻薬を含む数々の利権を手にし、武器の携帯もそのまま許された。その停戦交渉の窓口になっていたのが、去年失脚したキンニュンである。最近、この停戦協定を見直すという動きが軍政内にあった。それに対する反発がテロに繋がったという可能性は考えられる。