初の日緬合作映画
映画『にっぽんむすめ』上映会
ビルマ青年と日本娘の恋愛物語。このごろ東京では少なからず耳にする話題ですが、実は戦前、なんと65年前にも同じ話がありました。
ひとつは映画のなかに。
そしてもうひとつは、その映画のすぐそばに…。
ビルマ映画の父ウ・ニプの来日
ビルマ映画の父と呼ばれるビルマの映画人ウ・ニプが、実は戦前日本に来たことがあったというのは、ちょっとドキドキさせられる話ではないでしょうか。ウ・ニプは日本の映画事情の視察もかねて来日し、P.C.L.(現東宝)の協力を得て、「四季の国日本」「にっぽんむすめ」の2 作品を製作しました。「にっぽんむすめ」は、東京-ラングーン間無着陸飛行を目指すビルマ人パイロット、バテー青年と、彼を支える日本娘の恋愛を描いた作品ですが、高尾光子を主演女優に採用し、ウ・ニプ自身が監督&主演男優となって、精魂込めた作品です。
「にっぽんむすめ」はなぜ大ヒットしたのか
映画は日緬両国で公開されたようですが、ビルマでは「街中が興奮」するほどの大反響だったそうです。実は1935年(昭和10年)、日本の亜細亜航空学校にビルマ派遣留学生が入学するという画期的な出来事がありました。当時のビルマの人々にとって、飛行機は「白人の力の象徴」であり、それをビルマ人が操縦することには、衝撃的とも言えるほどの意味があったと言えます。主役の「恵美子」さんも大人気となり、えみさんロンジー、えみさんパウダーなど、多くの関連商品が売り出されました。1935年11月30日の初公開から、7-8年後のヤンゴンでも、まだ映画館で見られるほどの超ロングランとなったそうです。残念ながら、日本での上映記録はまだ見つかっていませんが、当時の東京の風景も見られる貴重な映像です。
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ウ・ニプ夫人の孝子さんと在りし日のウ・ニプ
壁面の写真は若き日のウ・ニプ
(1993年ヤンゴンのウ・ニプのご自宅で) |
もうひとつの恋ものがたり
そして、この映画撮影のかたわら、ウ・ニプは、まるで映画のストーリーそのままに、1人の日本女性と恋に落ちました。女性の名は鈴木孝子さん。彼女はウ・ニプと出会ったときの印象を「ニヤニヤしたところのまったくない、男らしい人だと思った」と語っています。2人の恋は急激に進展、反対する周囲を何とか説得し、結婚。2人がヤンゴンで新生活をはじめると、映画と重ね合わせて人々は、孝子さんを「えみさん」「えみさん」と呼んで慕い、家まで見物に来る人もいたそうです。映画のかたわらでこのような現実の恋が生まれ、ウ・ニプが美しい日本女性をビルマへ連れ帰ったことも、この映画ヒットのひとつの理由だったに違いありません。ウ・ニプは惜しくも1996年故人となられましたが「えみさん」は今もお元気に、ヤンゴン暮らしを続けておられます。
65年後の上映会
アメリカ軍に接収された日本のフィルムが、日本に戻された中から「にっぽんむすめ」は見つけだされました。この貴重なフィルム発見後まもなく、1992年(平成4年)と1996年(平成8年)に、日本で上映会が催されました。そしてもう一度、製作から65年目の今年、あらためて、上映会が行われることになりました。
2作目の日緬合作映画
ときは現代。今、ミャンマーと日本をロケ地とする日緬合作映画「血の絆」の製作が進行中です。ミャンマーで大ヒットしたジャーネージョーママレーの小説を原作に、ミャンマーに惚れ込んだ実力派、千野皓司監督が撮る「血の絆」は、その新しい取り組み、スケールの大きさそして、底流に流れる日本 -ミャンマー間の微妙な愛と憎しみを描く試み…どれをとっても、心待ちな作品です。しかしなんとも残念なことに、現在製作資金が集まりきらず、撮影が半分終了した後、残りが延期されたままになっているのです。今回の「にっぽんむすめ」の上映会会費も「血の絆」製作資金として使われますが、随時寄付を募られていますのでミャンマー好きの皆さん、映画に興味を持たれた皆さん、ぜひとも応援をお願いします。
(文:舟橋左斗子)
(参考;産経新聞1997.12.8、NHK「ミッドナイトジャーナル」'92.9.17.、「銅像が物語るミャンマー歴史上の人たち」タンランウィン)
下記のように上映会を行いますが、座席に限りがあります。映画鑑賞ご希望の方は予約制になりますので、あらかじめ後藤までメールをお願いします。
監督&主演 |
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ウ・ニプ |
主演女優 |
: |
高尾光子 |
日時 |
: |
2000年5月25日 16:00 - 18:00 |
会費 |
: |
500円
*余剰金が出た場合、「血の絆」への寄付金へといたします |
場所 |
: |
東京国立近代美術館フィルムセンター |
主催 |
: |
映画「血の絆」制作委員会
企画・脚本・監督・プロデューサ 千野 皓司 |
連絡先 |
: |
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東京国立近代美術館フィルムセンター
National Film Center, The National Museum of Modern Art, Tokyo
〒104-0031東京都中央区京橋3-7-6
▼交通:
営団地下鉄銀座線京橋駅下車、出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
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